週刊ZABOU「カバン≒洋服:BAG’n’NOUN(バッグンナウン)TOOLBAG インタビュー」

「メンズウェアで靴やカバンってセットじゃない?アクセサリーとか、眼鏡とか。
じゃあカバンも同じ感覚で作れるのではないか?」

「アクセサリーや眼鏡、時計。身に着けるものは同じ感覚で作れる。
なのでカバンも同じく、カバン屋でなくても分かる。それが始まりやった。」

そう話すのは小澤健氏。
30年以上大阪を拠点に服飾雑貨を手掛ける有限会社マンボラマの代表兼デザイナー。
90年代。誰もがアメリカ物の古着や製品に着目する中、イギリスやフランスなどのヨーロッパ物の衣料にスポットを当てた古着屋からショップをスタート。
後にオリジナルレーベルNecessary or Unnecessary 、今回取材させて頂くBAG’n’NOUNをリリースさせる。


ヨーロッパの洋服からヒントを得て、細部まで拘り抜かれた洋服や、鮮やかなカラーと個性的な形状が人気を呼び、今や日本だけでなく世界中で支持を得ているバッグ。洋服やカバンの概念を覆す独創的な物作りに定評があり、そんな拘りの製品はエンドユーザーは勿論、業界にもファンが多く、毎シーズンコレクションが発表される度にワクワクさせられる。


そんな洋服やカバンをZABOUでは長年お取り扱いしておりますが、本日はカバンのお話。
ブランド設立当初から作られているTOOL BAGについて、小澤氏にお話しを伺いに心斎橋の旗艦店マンボラマへ足を運びました。

ー洋服よりも自由な発想から生まれる、物を入れる為の袋状の物ー

小澤「バッグって自由度の高いアイテムやと思うねん。洋服はそれ用の知識が必要になってくるし、帽子は頭の形に合わせた丸い形状。靴も足の形にある程度合わせている。カバンはそうじゃない。中に入れるものも決まっていない。服をデザインする上で課せられる制約みたいなものがない。やりだしたら面白かったし楽しかった。」

—自由な発想から生まれるバッグンナウンのカバン。デザインするときは、どのようにして考えますか?

小澤「ある知り合いが、うちのカバンを気に入って使ってくれていたんやけど、((国外に持って行けないのが残念))と言われた。聞いてみると口が開いているので海外ではあまり受け入れられないという事。それを聞いてハッとした。海外用に新たなカバンをすぐに作ったね。」

—そういうところにヒントがあって、新しい物が生まれていくわけですね。

「これで海外旅行にも連れて行ってもらえるわな(笑)」

ー最初に作ったカバンは、イメージと違ったものが出来上がったー

小澤「頭の中にあるイメージと、実際に上がってきた商品を見ると、その違いにがっかりした事が一番大きい。特殊な副資材や生地を使ったりしたけど、それはカバンの本質ではない。洋服だってそう。特殊なものを使ったからといって、良いものが生まれる訳ではない。コムデギャルソンだってそうやろ?」

素材は基本的に、物作りの環境では国内でふつうに流通している、日本製の綿帆布やナイロン生地です。
色も同じく一般的に流通しているものがほとんどです。
決して特別なものを使っている訳ではありません。
日本では、特別でないもののクオリティーが素晴らしいのです。
そして、それが継続されていることも素晴らしいのですから、その素材を使うだけです。

BAG'n'NOUNホームページより抜粋。

小澤「一作目を作ったときに、そういった事に気付いて頭のスイッチを切り替えた。そのあとに作った製品がTOOL BAGやねん。」

ー機能を重視した作りではなく、見た目のバランスを意識したデザインー

BAG’n’NOUN(バッグンナウン) TOOL BAG(ツールバッグ) GOLD  ¥11,880-

小澤「洋服と同じく、こっちにポケットがあった方が可愛い。ここが開いていた方が雰囲気が良い。そういった考えから生まれたのがTOOL BAG。カバン作りが少し分かった気がしたときの製品が今でも一番人気で残っている。」

—モノづくりをするときに大事にされている事はありますか?

小澤「先入観を一度捨てる事。これは、こういう物という前情報があると、それに寄っていく。まずはそこをフラットにすることによって始めてくねん。自分の中ではデザインと言うよりかは折り紙を作っている感覚に近い。」

—独自の視点で作られるバッグは、デザインと言うよりアートに近い。そんなバッグ、カラー展開も豊富で、他にはない色味も人気の理由の一つはないでしょうか。

ー商業的に考えていないバッグー

—カラーバリエーションが豊富なのもバッグンナウンの魅力です。色の展開などはどういった考えで展開されてますか?

カラー展開が豊富なBAG’n’NOUNのTOOL BAG達。

小澤「あんな形の、あんな色のカバンがあったら欲しい。そういった考えから物は作っていく。あまり来年や再来年のことを考えていないので、色数は他のメーカーに比べると多くなっていくねん。11号帆布のTOOL BAGなんか何種類ある?笑」

—なるほど。ただ、やっぱり他では見ないカラーがある。そこがバッグンナウンらしさかも知れませんね。

小澤「僕が一番最初に欲しいと思ったのは、まっ黄色のカバンやもんね(笑)」

—一番の理由は自分が欲しいという事ですか?

小澤「そうそう。自分が欲しい。またはあったら可愛いやろうなっていうカバンを作るのがバッグンナウン。」

ー創業当初から同じ工場ー

小澤「大阪の堺市の工場で全て作られます。それはブランドが始まったときから一緒。初めて受けてくれた工場で今でも作られている。」

—MADE IN OSAKA。生粋の大阪人としては惹かれます(笑)

昔、私物として持っているカバンが、経年で取っ手が千切れたことがあったのですが、その修理からお届けまでが早かったのも、今考えると納得です。

小澤「工場が近いと良いもんやね。修理についてはメンテナンスと考えていて、使っていったらいつか綻びの出るもの。なので対応はしっかりとしていると思うわ。」

バッグンナウンがスタートしてから現在まで。
全ての商品はたった一つの工場で生産、管理されています。
逆に言えば、その工場で生産しきれない数量も不必要ですし、
生産不可能なデザインも不必要です。
つまり私達は、物をデザインし、生産することに対して
謙虚で等身大の努力の上にあるべきと考えます。
今後もこのシステムが変わる事はありません。

BAG'n'NOUNホームページより抜粋。

ー物が詰まった状態が良く見えるカバンー

—ZABOUでもリリース当初からお取り扱いがあり、今でも根強い人気のあるTOOL BAGですが、人気の理由は?

小澤「実際に売れたあとのことは結果なので僕には分からないけど、自分自身使ってて良いのは11号帆布のシリーズ。中に入れている物によって形が変わるから。本を入れると四角くなるし、着ていた服を入れると丸くなる。そういうのが良いと思わへん?」

11号帆布のシリーズ。GOLDと比べると柔らかい生地感が、物を入れたときに形状が変化する。

—確かに生地感が柔らかいからこその魅力だと思います。形状が反映されやすいですね。

小澤「カバンは洋服の一部だと思っているので、今日持つ物に合ったカバンを持ちたいね。僕はその見え方が可愛いと思っているので。」

「服飾雑貨というのは、からだに近いほうがよく見えるねん。
このバッグは、持ち手を持つと、ほら、腕に近いやろ。
肩に掛けるとからだの高い位置で脇にぴったりと収まる。
バッグを持った時の全身を見たとき、
こういうほうがかっこいいねん。」

BAG'n'NOUNホームページより抜粋

小澤「ギターもそう、体から近い方がカッコ良い。これは自分の美的感覚が関係してると思うわ。」

—カバン単体というよりは、物が入った状態で完成されるということですね。
持ち手とストラップが調整できないのもあえてということですか?

小澤「洋服で考えたときに、長さと言うのは決まっているもの。パンツの丈も決まっているでしょ?その長さでカバンを提案しているので、そういう物と捉えて欲しいですね。」

—確かに他のカバンメーカーにはない哲学が詰め込まれていますね。

「経年変化が美しい素材」

小澤「育って良い見え方をするカバンって少ないと思うんです。このTOOL BAG GOLDは良い色になる。経年変化する素材は数あれど、汚らしく見えない良い色って少ないと思うんです。色褪せたなりの見え方をする。」

「国産の9号帆布を使用しているのが、このカバンの特徴。」

「洋服は洋服の生地。カバンにはカバンの生地を。」

小澤「カバンに使われる生地というのは資材という括りになるんです。資材というのは洋服に比べて生地の種類が限られます。それは毎年流行に合わせて新しい生地が出るのが洋服ですが、カバンの生地は毎年新しい物が出ない。道具として使われる物なので安定して供給が産地が変わったり、世知辛い事情があまりないのもポイント。安定していて変わる必要のないもの。それがカバンの生地です。」

—流行に左右されないというのも資材(カバンの生地)の特徴なんですね。

小澤「僕はそれが良いと思っている。」

—洋服と同じ考え方で作られるカバンですが、カバンというよりは道具に近い。面白い(笑)



小澤氏の言葉の所々で聞こえる「洋服で考えると」、また「洋服と同等の物」。
その日の気分でコーディネートを考えるように、カバンもそれくらい気楽に考えてみても良いのでは?というメッセージの様に思えました。
気が付けば着ている、私的定番があるように。自然と手に取り、今日も使っている。そんなバッグだと思います。
そしてそれらは日本の工場で作られ、世界中で愛されている。この一般的なプロダクトデザインとはかけ離れたように思えるカバン作りを、世界中が認めている事の証明ではないでしょうか。

そんなバッグンナウンのカバンのフェアを久しぶりに開催します。


期間は8月の27日から、9月の25日まで。
WEBSHOPでは様々な種類のバッグを。そして店頭では本日ご紹介したTOOLBAGを様々なバリエーションで。
その世界観に是非一度触れてみては如何でしょうか?

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