週刊ZABOU「毅然たる。/ HAYASHI YOSHIYUKI -今までと、これからの10年-」

大阪店ではいよいよ来週30日(土)から始まるRESOLUTE FAIR。
デザイナーの林芳亨氏の事務所に話を伺いに行った。

昨年10周年を迎えたRESOLUTEの過去と未来。
ジーンズ4型のみを生産し続ける異例のブランドに、改めてフォーカスを当ててみた。

Q.林氏とボス谷川の出会い

「僕がBEAMSに居てる頃から林さんの事は知ってました。で、お店をやり始めてからドゥニームの営業の人が来たんですけど、たまたまその子が僕の後輩やって。で、話はとんとん拍子で進んでドゥニームの中の”Sud”ていうジーンズを取り扱いさせてもらう事になったんです。林さんにはその時初めてお会いしました。 」

「1万円以内で買える本格的なジーンズやから当時は人気やったなぁ。今もまだその頃のサンプルが手元にあるで。」

「どや、色落ちもええ感じやろ(笑)」

「Sudやってたんは1年か2年かそこらやから、持ってる人は珍しいんとちゃうか?初めてZABOUで取り扱ってもらったのもこれ。こんな感じで片耳仕上げ。」

穿くとこんな感じ。過去BLOGより。(現在は生産終了)

「そこからうちの別注をやらしてもらったり、付き合いをスタートさせてもらいましたね。コーデュロイのパンツとか、昔古着であったような感じのがベースで。。。」

大量のスワッチから当時展開していたコーデュロイの生地のものを探しだしてくれる林さん。
谷川「TC(テトロン/コットン)生地で519と同じく、シルエットは細身で作ってもらいました。」

「昔はいろんな色のコーデュロイのパンツを作ったわ。そのあと僕がドゥニームを退社して、RESOLUTEを扱ってもらうようになったんや。」

Q.林氏とジーンズ

林さんが所有するLevi’s501 66モデル

「元々広島におるときからジーパンが好きで穿いてたんや。中学生くらいの頃からかなぁ。確か初めはLevi’sではなく※1”BIG JOHN”やったわ。」

※1 BIG JOHN(ビッグジョン)1958年創業のデニムメーカー。海外製ジーンズの卸売りから始まり、のちに初の国産ジーンズを生産したメーカー。

「え、意外ですね!」

「Levi’sの方が少し高くて、BIG JOHNのあとに買うた。当時はそんなに縮むなんて知らんかったから、丈も短~なって。その頃は501は生しかなかって。当時のアメリカの学生なんかも短い丈で穿いてるけど、あれは単純に洗って縮んだ長さなんやとあとなってから知った(笑)」

「当時から好きなんは66などの細いモデル。それが70年代頃になると、そんなに人気のあるものやなくなって、サーフファッションが主流で、646や517とかのブーツカットばかり。古着屋では棚の一番隅に積んであってタダ同然で売ってたわ。僕は好きなのでその頃にぎょーさん(沢山)買いました。」

Levi’s 517 ブーツカット(Levi’s HPより出典 https://www.levi.jp/men/pants/jeans/lvc%20517%20rigid%200217/851920002.html#start=1)

「その頃はどちらかというとベルボトムが主流やったもんね。」

「そうそう。今でこそLevi’sのジーンズなどの左綾デニムは、捻じれるのが当たり前になってるけど、当時は不良品として扱われてたのとちゃうかなぁ。」

—捻じれで言いますと、RESOLUTE 712は防縮加工を施しているのに捻じれてきますよね。

「712のベースとなる505もそうやけど、あれはスキュー加工(捻じれ防止加工)を施していないから。基本的にスキュー加工というのは日本の開発したものなので、国外のジーンズは、捻じれるようになっとーるのよ。RESOLUTEの712も同じくです。」

スリムテーパードモデルの712。このようにして1ウォッシュでも正面にミミが捻じれてきます。

「自分でジーパンを作るようになって、RESOLUTEであの頃のLevi’sに近づくように色々試行錯誤を繰り返しました。」

「初期の710と今の710。改良を重ねて限りなく当時のLevi’sに近い青に近づけている。
だいぶと思っているような青に近づいてきたけど、今できる最大限の理想に近づけるようにしてます。」

「糸もこんな感じで色を変えてみたり、細さを変えたり、
縦横の比率を変えることによって、こんな感じで色落ちしたときに、ムラ感が出るようにしてます。」

「自分で穿いたり、いろんな人に穿いてもらったり、色落ちの度合いを見て改良を重ねて、今のジーパンがある。でもやっぱり実際に自分が穿いて色を落としてみないと分からんわな。」

—うん、奥が深いですね。711はどうでしょう?

「勿論品番ごとに変えていて、これはXXのヴィンテージのサンプルやねんけど、生地に独特のムラがあるやろ。
僕より少し若い世代の方は、所謂ヴィンテージ、レプリカブームを体感してはる方たちで、この感じ好きな人が多いんよ。
711は穿き方にもよるけど、これに近い感じに色落ちしたらなっていくんとちゃうか。」

「1950年代は紡績の技術がまだまだ発展途上にあったから、こういう凹っとした色落ちになるんですかね?」

「昔と違ってコンピュータが無い時代やから、手作業で糸を紡ぐとなると、こういう雰囲気になるんや無いかな。だいたいBIG Eまで。66になるともっと綺麗やけどね。」

「サンプルはこんな感じ。どういう風に穿くかによって色落ちは変わるわ。横糸が細いから、アウトシームのブリッとした感じが強く出てくるねん。いかにも労働者のパンツって感じやんな。」

RESOLUTE 711のエイジングサンプル。

「ステッチもこれだけ多くの中から選んでます。基本的に黄色の綿糸からオレンジのコアヤーン(外側が綿、内側がポリ)、最終的にスパン糸という化学繊維の糸に変わっていくんやけど、その順番に丈夫なんや。最も負荷のかかる部分には強度のある糸に変えていってます。Levi’sもそう。XXは元々綿糸だけやったけど、途中でコアに変わっていくやろ。XXがベースの711も綿糸とコアが混ざっとる。ただ、綿糸も油や汗で弱くなるけど、ちゃんと洗濯すれば強度はしっかりと保ったまま穿けるんよ。」

「細かいところやけど、コバステッチ(内股)。ここは日本の多くのメーカーは、だいたいが12mmやけど、RESOLUTEではLevi’sと同じくの5mmで合わせとるねん。色んな工場を試したけれど、最終的に岡山の新見に行きつきました。新見の工場は元々Levi’sを縫っていた工場やから、この仕様が自然と出来るけど、実はどこでも出来る訳ではないんよ。」

Q.影響を受けた人、モノなど

「ヨーロッパ物が昔から好きやな。これはフランスが誇る銘品集。ウエストンやラコステなど、当時のフランスのええもんが載ってる。僕の趣味や身に着けるものはここから影響を受けていることが多いんとちゃうか。ジーパンも当時のフランスでは、労働者の作業着ではなく、ファッションとして扱っている。だから革靴と合わせてるでしょ?アイビーが好きやから、労働者のそれよりカジュアルに合わせてるのが好きやからね。」

「昔はアメリカよりヨーロッパの方がよぉ行った。向こうの人の方がアメリカ人よりも501を穿いていたから、自然と影響は受けていると言えるわ。」

「PARABOOTはこの本を見て初めて知った。
今とはタグも違うやろ?」

フランスのセルマーオプティカル。林師匠の私物。
物持ちが良い事でも知られる林師匠。

「人物でいうたらポールウェラーはお年を召した今でもカッコ良いね。当時のフレンチアイビーの感じも良かったけども。」

Paul Weller 元The Jam、The Style Council
イギリスのミュージシャン。62歳になった今でも現役でプレイする。
theguardian.com より引用

「服に興味を持つことは勿論やけど、昔は本や映画しかなかったからな。
映画からの影響も大きいと思うよ。」

「’’冒険者たち’’の若いころのアラン・ドロンとかカッコ良かった。”ひまわり”のマルチェロ・マストロヤンニとか、当時はヨーロッパの映画から影響を受けた…というかそれしかなかったから(笑) 映画に出てくる登場人物の持ち物も良いもの持ってるよな。」

アラン・ドロン主演:冒険者たち amazon.co.jp
青いシャツにB-3のジャケットを羽織って走る姿に感銘を受けた林氏。今年の冬は寒いので、私物のB-3も活躍中らしい。

Q.次に欲しいもの

「昨年と今年と、BARBOUR見てはる方多いんですけど、ええのありますか?」

「私物やとハンティング用のSOLWAY ZIPPERを着てるけど、BEAUFORTとかはスタンダードで良いと思うわ。ネイビーなんか気分でええよな。」

ハンティング用アウターとして開発されたBEAUFORT。サイドスリット付近にあるポケットには、狩りで取った動物を直接仕舞う事の出来る…らしい。

「やっぱりスタンダードなものは普遍的な良さがあって良い。今年は私物のBARBOURのライナーを買い足したんやけど、結構温くてええで。」

ーーそういえば巷ではサイズアップが流行っているそうで

「自由に穿いたらええんとちゃう。俺はやらんけど(笑)それはスタイルやから穿く人の自由やし、丈も長めに穿くのも良いし、緩めに穿くのも。ノンウォッシュのジーパンで乾燥機バンバンかけて毛羽立たせて穿くのもシャギードッグみたいでカッコええやん。そういうのを革靴と合わせて穿くのもお洒落やろ。」

Q.これからのRESOLUTEについて

「RESOLUTEはこれからも変わらんよ。理想はいつ行っても同じものが買える。始めた時と何も変われへん。それがお客さんにとっても一番幸せやろうし。
穿き手の着方が変わろうとも、やっぱりスタンダードなものやから何にでも合うことは変われへんし。
逆にスタンダードなものって、あるようでないで。例えば靴、形は昔と同じでも、革質を見てみるとそんな良いものではなくなっていたり。」

「どうしても名前が売れたら、数を売るために質を落としたりするメーカーも中にはありますからね。」

「そうそう。逆に質を追求するために値段が上がってしまったりとか。 それよりも、自分が思う完成形に少しでも近づけ、アップグレードしていく。質は落とさんからそっちの方が良いやろ。自慢ではないけど、RESOLUTEはこの10年値上げもしていないからね。そういう意味では”継続は力なり”なんかなぁ。」

Q.最後にこれからRESOLUTEを買うお客さんに一言頂けますか?

「ジーンズはその人の穿き方でもいいと思うけど、一番は長く穿いて欲しいという事。その人となりが出て色が変わっていく経年による劣化が良しとされるのは、やっぱりジーンズだけだと思うんです。濃い時は濃い時の合わせ方があるし、薄いなら薄いなりの合わせ方がある。それを楽しんでほしい。その人の顔になるから。」



林師匠、ありがとうございました。
日本人が作る、日本人にあったジーンズは、この10年で活躍の場を世界に広げております。
今改めて、自分たちが扱えることを誇りに思います。

そんなMADE IN JAPANが誇るRESOLUTE。全品番、全サイズが揃うRESOLUTE FAIRは1月30日(土)よりスタート。
デザイナー林氏によるリモートフィッティングもご予約受付中です。(こちらからご覧ください)

是非この機会にあなたのお気に入りの一本をお探しください。

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