洋服解剖学 NO.5 LACOSTE(ラコステ)

どうも、東京店スタッフの濵地です。

さあ、洋服解剖学第五回はラコステです。
ラコステなんて歴史と伝統を持ったブランドを、僕みたいなひよっこが改めて解説する必要もないんですけどね。
でも皆さんもラコステ好きでしょう?僕も好きです。
きっと服好き野郎は遺伝子レベルでラコステのポロシャツを好きになるんだと思います。
ただのポロシャツなはずなんですけどね、何でなんでしょう。
まあ今回は服のパターンとか縫製云々は置いといて、ただ純粋にラコステについて語ろうではありませんか。

ラコステの起源

ラコステは1933年に設立されたフランスのブランドです。
創業者でプロテニス選手であったルネ・ラコステは「ワニ」として知られました。

きっかけは1つのスーツケース。
ルネの所属するフランスチームが大会の練習の合間にボストンの街並みを歩いていたときの事。
洋服店に置いてあったワニ革のスーツケースに目を奪われたルネはキャプテンに「もし僕が試合に勝ったら、このスーツケースを僕に贈ってくれないか」と言いました。
残念ながら試合に負けてしまったルネですが、その粘り強いプレースタイルに感銘を受けたアメリカの記者がスーツケースの賭け話を記事にし、彼を「ワニのようだった」と称しました。
それからルネ・ラコステはアメリカでは”アリゲーター”、フランスでは”クロコダイル”というあだ名が付けられました。

ルネはただのプロテニス選手ではありません。4大大会で7度の優勝を挙げた偉大なプレーヤーです。
ですが、そんなルネは当時のテニスウェアに不満があったようです。

それもそのはず。当時は白のウールフランネル、コットンフランネル、もしくはコットンオックスフォードに白のフランネルかダック生地のパンツという服装が一般的でした。
元々結核を患っており体調面に不安があったルネは、汗をかくと身体に張り付く布帛のテニスウェアを変えたいと思い、ポロ競技で着用されていたシャツを参考に軽量で通気性、吸湿性に富む鹿の子のニット生地を半袖の襟付きシャツに採用しました。

これこそが現代の「ポロシャツ」が誕生した瞬間でした。

病気のため25歳で引退したルネはその4年後の1933年、ニット製造会社の社長のアンドレ・ジリエと共にラコステを設立しました。
ちなみに創業以前のフランスではこのポロシャツタイプのことを「Chimese Lacoste」(Chimiseとはシャツの意、昔のタグにも書いてあるやつですね)と呼ばれていたそうです。

皆さんが大好きなワニのロゴですが、これは1927年にルネの友人でデザイナーのロベール・ジョルジュが描いたもの。
それを気に入ったルネは白いブレザーに刺繍し、それを試合があるたびに着ました。ワニの刺繍が入ったブレザーを毎回着てくるわけですから注目されないはずがありません。

そうして1933年、ルネは強気にもそのワニを今のポロシャツに刺繍しました。
ワニの刺繍が入ったシャツなんて今思うとかなり攻めていますよね。ルネの友人らもやめとけとたしなめたそうですがルネは諦めませんでした。
その結果大ウケ。今やポロシャツに限らず世界的なブランドとなりました。

定番 L.12.12の秘密

さて、こちらが定番L.12.12
正式な読み方は「エル・トゥエルブ・トゥエルブ」。Lは「ラコステ」、最初の1は「プチピケ素材」、最初の2は「半袖」、続く12は12番目の試作品を採用したことを意味します。
現代のポロシャツのモデルとなったこちらのL.12.12ですが、シンプルながらもちょっとした拘りがあります。

まずは素材。今でこそポロシャツに鹿の子素材を採用するのは一般的ですが、テニスウェアに採用した当時は革命でした。
前述の通り、軽量で通気性、吸湿性、速乾性に富む鹿の子素材はそれまでのテニスウェアの常識を変えました。
また、コットン100%でありながら伸縮性を持ち合わせシワになりにくく、それでいて毛玉ができにくい。
もちろん現在でもその着心地は損なわれていませんが、L.12.12の鹿の子は通常1本の糸を使って生地を織る一般的なポロシャツと異なり、高級シャツに使われるような繊維の長い綿を細く紡ぎ2本引き揃えて編むことでしなやかでしっとりとした質感になっています。

ボタンはすべて貝ボタン。ボディの色に合わせて黒蝶貝、白蝶貝を使い分ける拘りがあります。

そして上前立て。身頃から2mm横に出すことで、動いた時にも下前立てが見えないように気遣われています。

ポロシャツの礎を築いたブランドですからやはりそこは”普通のポロ”ではございません。

生産国の違い

現在、ラコステは大きく分けて日本アメリカフランス流通のものがあります。
同じパターンを使っているわけではないので細かい違いはあれど、ぱっと見ではまず違いはわかりません。
仮に一発で分かる方がいればそれはもうラコステオタクを通り越して変態です。
ZABOUで取り扱っているのはアメリカ流通のもの。ですがせっかくなので日本、フランスのものも触れておきましょうか。

まず、日本で流通しているものはMADE IN JAPANのいわばジャパラコ。秋田県横手市のラコステ専門ファクトリーであるヴァルモードで生産されています。
実はこのジャパラコ、ヴァルモードの初代社長である寺田正行氏がパリ近郊のトロワの工場に自ら趣き、泊まり込みの研修の末に仕様書を作り日本に持ち込んだというのだから頭が上がりません。
それでいてヴァルモードは、ワニのエンブレムを効率よく縫うためのミシンの開発など独自の工夫もされている徹底っぷり。
クオリティで言えば間違いなく日本のものが一番です。

一方、アメリカ、フランス流通のものはどちらもフランス企画。現代においてこれらは「フレンチラコステ」または「フレラコ(フララコ)」と呼ばれています。
ジャパラコを下げるつもりは全くございませんが、やはり服好きはこちらのフレラコに反応してしまうもの。このブランドネームのためにお金を払っていると言っても過言ではありません。

フランス企画といっておりますが、実は昔フランスで流通していたものはMADE IN FRANCEでいわば真のフレラコだったわけです。

一方でアメリカは1966年から1988年までアメリカのアイゾッド社がライセンス契約を結んでいたため、自国でMADE IN USAで生産しておりました。
「アイゾッド」なんて呼ばれる、後身頃の方が長いポロシャツを見たことがあるのではないでしょうか。
アメリカのものはアメリカ製、フランスのものはフランス製。服好きは昔からそういったところに拘ります。ですからフランス製でなくなった今もフランス企画のフレラコが重宝されているわけです。

とはいえ、アメリカ製、フランス製なのは昔の話。今はアメリカ流通のものはペルー、エルサルバドル、最近ですとカンボジア、スリランカなどの東南アジアでも作られています。
一方、フランス流通のものは生産国の表記義務がないため定かではありませんが、一般的にはモロッコやチュニジアと言われています。

今はアメリカ流通、フランス流通、どちらも大差ありません。ラコステのインポートモデルを扱うお店のほとんどがアメリカ流通のもので、強いて言うならアメリカ流通の方が若干安く手に入るくらいですかね。

長年愛されてきた普遍的なデザイン

長年多くの人に愛されてきたのには、その完成された普遍的なデザインが理由でもあります。
王道、マスターピース、ある種無難なポロシャツはどんなスタイルにもハマるのです。

●トップス LACOSTE(ラコステ)¥17,600-
●ボトムス RESOLUTE(リゾルト) ¥27,500-
●腕時計 Naval Watch(ナバル ウォッチ) ¥15,400-
●シューズ G.H.BASS(ジーエイチ・バス) ¥31,900-
ラコステ×リゾルトというシンプルながら最もかっこいいとも思えるスタイル。
色の残った濃いデニムも良いですが、ここは自分で育てた色落ちデニムを合わせて欲しい。
リゾルトのデザイナー林さんもするこの王道×王道のスタイルを是非真似していただきたい。

●トップス LACOSTE(ラコステ) ¥17,600-
●ボトムス GUNG HO(ガンホー) ¥12,980-
●シューズ SPERRY TOP SIDER(スペリートップサイダー) ¥8,800-
ネイビー×オリーブの合わせは抑えておきたいところ。
白スニーカーを合わせると自然と男臭さが無くなります。
鹿の子のポロシャツはTシャツとシャツのいいとこどりのアイテムなのです。

●トップス LACOSTE(ラコステ) ¥17,600-
●ボトムス BARNSTORMER(バーンストーマー) ¥23,100-(7/1より値上げ)
●ベルト SLOW&CO(スロウ) ¥17,600-
●シューズ G.H.BASS(ジーエイチ・バス) ¥31,900-
黒を選べばきれいめスタイルにも良く合います。
バーンストーマーのチノであればオフィスカジュアルにも対応できます。
元はスポーツウェアだとは思えないほど、ラコステのポロシャツには不思議と品の良さが備わっているのです。

●トップス LACOSTE(ラコステ) ¥17,600-
●ボトムス PROPPER(プロッパー) ¥8,580-
●シューズ MALIBU SANDALS(マリブサンダル) ¥14,300-
半袖×短パンのカジュアルスタイルでもラコステのような上品なアイテムを合わせれば、子供っぽくなることはありません。
マリブサンダルを履けば大人のリゾートスタイル。
鹿の子素材のポロシャツに短パン、サンダルは猛暑を快適にしてくれるでしょう。

さて、色々書かせていただきましたが、来たる夏に向けてラコステのご準備はお済みでしょうか。
まだの方は是非定番色から押さえておきましょう。
きっとこれから先何十年も愛することになりますから…。

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濵地

ZABOU初の愛知県出身スタッフです。

皆様に満足していただけますよう努めてまいります。