むかしむかし、中央区銀座1丁目に、若い洋服屋のタイチョーがいました。
タイチョーは店で働き、お客様に最適な洋服選びのお手伝いをしていました。
ある年の夏。遠くの街から東京メトロ有楽町線を使い、旅の行商人、キングがずこずこやってきて、タイチョーに一つの巾着を差し出しました。

「これはスピンドルバッグ。と呼ばれる、不思議な袋だ。」

キングはそういって笑いました。
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タイチョーが袋を開くと、中には何も入っていませんでした。
キングは言いました。
「この袋は、中に入れたものを散らかさずにまとめ、必要な時にすぐ取り出せる。小さなものも、大切なもの、例えば大事にしているポラロイドなどを全部まとめて持ち運べるんだ。」
それからタイチョーは、スピンドルバッグを棚に忍ばせ、お客様に勧めました。

「この服に合わせて、このバッグを持って下され。そうすればポケットの中も、鞄の中も散らかりません。それにコーディネートにちょっとしたアクセントを付けくわえられる。さらにお昼休みやちょっとした外出はこの子のみを持ち運ぶことが出来る優れものでございやす。」

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たちまち噂は銀座中に広がり、タイチョーの店には遠くの街からも人が集まるようになりました。
誰もが「服を買うなら、あの巾着も一緒に。」と言うのです。
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やがてタイチョーは思いました。
「服を選ぶ楽しさを、この袋がもっと増やしてくれるのだな。」
そうしてタイチョーはお店にもう一色のアーミースピンドルも並べました。

そして今も、この店の服を手にする人はそっとバッグの中にスピンドルを忍ばせ、ある時はモノが散らからないようバッグインバッグのみとして、ある時は身軽にお出かけする際に単体で使用し、生活を豊かに、楽しんでいるのだ。
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