週刊ZABOU「夏に向けて、月城ニット 工場見学編」

ぽかぽかと暖かい日差しが降り注ぐ三月下旬。
ふと昨年の事を思い出したりしました。

コロナ禍も二年目に突入し、国外のブランドの入荷が軒並み遅れるという状況で、ジャパンブランドの強みに着目し、新たに取り扱いが始まったブランド。
大阪の南の端に位置する「岬町」。そこにある1966年創業のニット工場が作る「MOONCASTLE」は、クラウドファンディングからスタートした初のメンズライン。

私たちの住む、大阪の中心地からは電車で一時間程。今でも自然が豊かに残るこの地で、ニットが生まれているという事を知り、実際に工場にお邪魔したのが昨年の4月。それからどのように状況は変わったのか、丁度新作の商品を生産中という事もあり、今回約1年ぶりの工場へお邪魔しました。

出迎えて下さったのは、月城亮一さん(28)。株式会社月城ニットの三代目である。
これまで女性向けのニットのOEMで培った技術はそのまま、自分自身もユーザーとなることのできる商品を作りたい。また、お客様の感想や意見を身近に感じることが出来るように、自社ブランドを立ち上げた。

月城氏「今年一年でメンズの生産量が大きく増えました。割合としては7割くらいでしょうか。また、スタッフも増えて自分自身で営業に回ることは少なくなりましたが、その分生産に携わる時間が大きく増えました。」

ニットは意外にもハイテク技術を駆使し作られる。
CADで形を打ち込み、その通りに編まれてパーツごとに生産。勿論、糸の調子や機械の調整などは人の手ではないとできない部分があるが、完全な専門技術を用いて形成される。

胴と袖部分との繋ぎ目。こういった角度も数値によって左右されるので、ニット作りの骨組みはこの機械で決まるといっても過言ではないそう。

専門分野となるこちらの作業。限られた人間しか扱えないうえ、後継者が中々出てこないという事もあり、月城氏自ら勉強中という事。
生産に加わることによって、改善すべき点や見えてくる事も多いとか。

月城氏「まず、気になったことが生産効率。ここを上げる事によって、価格は下げられる。品質は落とさないまま、お客様にお買い求めやすい価格で提供できるということが分かったので、現在改善を施しているところです。」

出来上がったデータを編み機に移し込み生産がスタート。
今まではパーツごとに生産するようなやり方だったのに対し、全てのパーツを一気に生産する事により機械が止まる事なく、効率良く生産が進むようになった。

月城氏「実際に他の工場様や、メーカー様に出向くことによって、自分達がやってこなかった部分が明白となり、改善する事が出来ました。」

ここからは人の手。
リンキング(編み合わせ)やミシンなどの縫製によって形に仕上がっていく。

月城ニットの製品は人の手によって、着る人の事を考えて作られる。
ミシンで縫製する際に生まれる縫い目。ここを出来るだけ小さく仕上げることによって、肌へのストレスも軽減できる。
優しさから生まれる拘りである。

形として出来上がったニットを、蒸気とアイロンによってプレス。この作業によりニットのサイズが決まるという。
仕上がった製品は細かく検品し、全国に出荷される。
検品を行う上で、製品に問題がないかなどは勿論、サイズ感のばらつきを抑えることも目的の一つとして挙げられる。

月城氏「糸の色によって、若干のサイズ感の違いが生じたりすることもあります。細かい調整などを繰り返すことにより、サイズにムラが出ないよう心掛けています。」

そうして出来た今回の新作「ICE COTTON CARDIGAN」
実際に出来立てのニットを着させて頂きました。

MOONCASTLE(ムーンキャッスル) アイスコットンカーディガン  ¥12,100- 3/19(土)より店頭販売開始

アイスコットンのシャリ感のあるヒンヤリとしたリネンのような質感はそのまま。
Tシャツの上、ニットの上に羽織ることのできる、ライトアウター的な感覚。
半袖の上に、夏場着る事の出来る上物という、理想的なカーディガンになっています。

月城氏「レディースのカーディガンとは違う点として、前立てにはこだわりました。比較的ここは編み続きで分けないこともあるのですが、あえて前立てと見頃を別付けにすることによって、手間はかかりますが、頑丈になりました。」

インナーを選ばず、ラフな見え方にならないのも、このような細かい芸当の積み重ねから生まれるのかも知れません。

生産に携わることによって、見えてきた問題

月城氏「大阪はニットの産地として、徐々に縮小しています。潰れていく工場も少なくはありません。
工場が潰れると技術の継承が止まってしまうという問題があります。生産の立場に立ってみて感じた事ですが、それにはまずは自分自身が学んでみて、それを周りに継承していき、文化として残していく必要があると感じています。
また、生産の仕組みも調整している最中です。これも実際に自分が働いてみて感じた事。職場環境の改善を通して、工場としてのレベルアップを図っています。」

月城氏「ただ、自分自身作る側に立って、ニットがより好きになりました。今は編み地も色々と出せるようになったので、ニットで出来る事の可能性を以前より感じています。企画する段階でも出来ることが増えている分、こんなものを作れたら良いなという事が、実際に形に出来るようになったので、妄想が止まりません(笑)。今の目標は自分で1から全ての工程を行えて、作れるようになるということです。」

現在、アイスコットンの他にも、夏素材を使った新作のニットを思案中。
実際に作る側に立つことによって、出来る事が明白になり、よりイメージが鮮明にに湧いてくるのだとか。

また、インディゴ染めのコットン素材を使用した秋冬のニットも企画中。

月城氏「これまでビジネス向けの製品が多かったのに対し、あまり固定概念にとらわれず、自由な発想でニットを考えるようになりました。使う人の事を考えるのはこれまでも同じですが、他にはないものを作る事が目標です。」

これまで培われてきた確かな技術力はそのまま継承し、時流に合わせて新たな発想で進化していく。
こうした作る人達の思いによってこれからも進化していくだろう。
大阪発のニットブランドのMOONCASTLEに、これからも目が離せない。


MOONCASTLE(ムーンキャッスル) ICE COTTON LONG CREWNECK  ¥9,350-


MOONCASTLE(ムーンキャッスル) ICECOTTON CARDIGAN ¥12,100-
ネイビー、ブラック、ライトグレー、ロイヤルブルー 3/19(土) 店頭販売開始

MOONCASTLE(ムーンキャッスル) ICE COTTON SWEATER 4月入荷予定



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