11月。6時。
ようやく秋冬の空気、匂いが漂ってくる朝を迎え、キングこと岡安は肌寒さを覚えた。
毎朝ベランダで食べるサラダ味のプリッツが今日は一段と冷たい。彼にとってはこれが季節の変わり目を示唆する。
蟹股で階段を下り、ゴミ出しをしたのちに最寄り駅へと向かう。
心なしか、寒い日にもかかわらず、彼の表情はどこか暖かさを帯びていた。

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今日は表参道でイベントの打ち合わせ。
担当者と談笑しながら、横にいるビーストこと竹下の異変に気付く。なにやらもじもじして頻繁に姿勢を変えているのだ。
岡安は担当者がはばかりに行ったとき、竹下にその異常行動の理由を聞いた。
「キング、暑過ぎました。」
そう、竹下は厚手のニットにサーマルを着て、極寒日の装いで打ち合わせに臨んでいたのだ。
寒い時期にはなったが、まだ最高気温が20度あたりをうろうろしている今時期。オーバースペックが過ぎた。
すると岡安は無言のまま、立ち上がり、竹下に装いを公開した。

●カットソー SPINNER BAIT(スピナーベイト) サイズ:40 ¥13,200-
●カーディガン BARNS OUTFITTERS(バーンズアウトフィッターズ) サイズ:M ¥20,900-
●パンツ F.O.B FACTORY(エフオービー ファクトリー) サイズ:M ¥20,900-
●シューズ AURORA SHOES(オーロラシューズ) サイズ:US8 ¥37,400-
モデル 身長167cm 体重56kg 足のサイズ26cm
「ビースト。秋冬は温度調節、カサネギがカギなんだ。今回、僕のヨソヲォイ(装い)は、薄手の物を重ね、最後に軽めのアウターを持ってきたことで、そのカギを握った訳だ。」
竹下、頷く。

「キーマンは間違いなくNAVAL Utility JK だね。デニムらしい質感がありながらの8ozの生地は軽く、そしてサイドからも入るポケットも実用的で何よりーーー」

「かっこいい」。
竹下は再度頷くほかなかった。
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岡安は段取り良く筋肉質な打ち合わせを終え、ムーンウォークで銀座店へ向かった。
「NAVAL Utility JK か。ヴォクも欲しくなりましたよ。」
その竹下の問いかけに岡安は振り返ることなく、ジャケットに袖を通し始め、背中で返事をした。

竹下には、日陰のビル街で陰影を帯びた‘‘それ‘‘が、どこか故郷の新潟の海を思い起こさせる綺麗な、キレイな青をしているように見えた。
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