パパ岡安、男の勲章編
2月。
まだ冷え込むが、そろそろ春アイテムが着たくなるこの頃。
この埼玉県生まれ埼玉県育ちの男、岡安は子どもの送り迎えの為にママチャリを爆走しながら、あるアイテムのことを思い出していた。
Saint James(セントジェームス)

フランスの老舗。
ウエッソンは船乗りのユニフォームとして作られたものがベース。特徴的なボートネックは船上でも脱ぎ着しやすく、前後どちらでも着れる、実用的なディテールだ。

岡安はこの実用性がファッションに昇華された、そんなところに魅力を感じ、愛し、共に時を過ごし、笑い合ってきた。
冬はやはりセーターやスウェットを頼る。でも、春が見えてきて、このカットソーの存在を思い出さずにはいられなかったのだ。
そしてこのアイテムの気に入っている点。それは自分の人生と共に経年変化してきている点。
今や銀座のキングと呼び声高い彼にも、過去には、結婚や仕事や私生活などすべてを含めてたくさんの苦節、困難があった。そこにいつもウエッソンはいたのだ。

岡安のウエッソンは凄まじいエイジングを見せている。それは、色合い、首元に現れている。
まず色合いだが、エクリュというきなりの色が、洗濯を重ねたことにより、いや、紫外線もあいまって、完全な白になっている。この白は狙って出せるものではない。

そして首元。見る人が見ればボロい、というかもしれない。しかし、岡安にとってそれは異なる。
首元の擦り切れ具合は男の勲章。月日を共に重ねてきた分だけ、磨耗していく。世の中に加工のアイテムはたくさんあり、どれもナイスなものに間違いない。しかし、この首元の勲章は、狙って作れるものではないのだ。
久々にニ◎リのタンスの引き出しを眺めながら、岡安はウエッソンへの思いを馳せていた。そして、たまらずそれを取り出した。
「アイロンかけないとな…」
畳まれていたウエッソンのシワを取るため、奥さん(通称奥安さん)にアイロンの依頼をかけなければ。
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首元は直さない。
それは、彼の勲章だからだ。
月日、着用に正直なウエッソン。この世に一つとして同じ経年変化をしたアイテムはない。
確かな自信を感じながら、岡安はウエッソンに腕を通し、今日も東京メトロ有楽町線に飛び乗るのだった。
