【寓話】タイチョーとふしぎなブーツ
2025.10.20
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横浜駅、JR東海道線上り。朝のホーム。
まだ半分スケベなことを考え、もう半分は寝てる頭で、タイチョーくんはこれから乗る満員電車をやり過ごす。
ショットの持ち方でコーヒーを飲んでいた。すると、ふと足元から、低い声がした。
「立て。立つんだ、タイチョー。」
一瞬ゾッとした。
でも、それは確かに聞こえた。
昨日から履きはじめたばかりのブーツ──ヘンリーが、しゃべったのだ。

タイチョーくんは苦笑いした。
「やはり気のせいだろ」
けれど電車の揺れでふらついたとき、ブーツが少しだけ前に押し出した。
まるでもう一歩いける、と背中を押すみたいに。

ZABOUに着いても、ヘンリーは静かだった。
RESOLUTEの品出し、4階までの往復、コンビニにトイレットペーパーを買い出しに行くとき。
けれど不思議なことに、足が軽い。
一日中歩いても疲れない。
・
帰り道、日比谷線下りホーム。
靴の影が少し誇らしげに見えた。
それもそのはず。
このブーツは、1920年代のボクシングブーツをもとにして作られている。
試合に挑むボクサーのように、前に出るための靴なのだ。
姫路のカーフレザーはしなやかで、履くほどに自分の形に変わっていく。
グッドイヤー製法で作られた底は、修理を重ねながら長く生きる。
まるで「倒れても、何度でも立ち上がれ」と言っているよう。
家に着いてブーツを脱ぐ。
・
今日も無事に一日が終わった。
タイチョーくんはヘンリーを磨きながら、小さくつぶやいた。

「明日も頼むぞ、相棒。」
ブーツは何も言わなかった。
けれどその革の表面が、
少しだけ光った気がした。
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