
今年も例年の如く「記録的猛暑」「●●倍の暑さ」といった言葉を目や耳にする。
男性でも日傘を差すくらいだから、そうした日除けのアイテムはなくてはならないのだろう。

僕は幼い頃から被り物が大好きなので、今でも何かと頭に乗せていることが多く、真夏はベースボールキャップやバケットハットなどを被ってきた。
しかし、20代になってからは馴染みの洋服屋で購入したパナマハットを被ることが多くなった。
パナマハットとは

トキヤ草という植物を細く裂き、現地の人が手で高度な技術をもって編み上げた帽体を用いて成型した帽子。
アメリカのルーズベルト元大統領が、パナマ運河を視察した際に被っていた帽子。これこそ世界にパナマハットが広まったきっかけで、
元はエクアドルの先住民族が被っていたとされている。

それからというものの、夏場にスーツと合わせていたり、洋装だけでなく日本では和服や浴衣に被る、夏の風物詩とされており、
ワンランク上の正装ならぬ、正帽といった認識でいた。
白状するが、手を出したきっかけの一番の理由は単純に「カッコ良いから」。同世代がまだ手を出していないジャンルで、子供っぽくならない。
背筋が伸びた気になるし、実際に身長も少し高くなる(笑)
少し良いレストランにも被っていけるし、テーラードジャケットに合う夏場の帽子なんて、そうそうない。
最初はそれこそ子供がいちびった(関西弁でふざける、調子に乗るという意)ようにしか見えていなかっただろうが、加齢と共にようやく少し似合ってきたように思う。
ただ、色々と被っていく内に、自身の顔の形と、海外製の帽子の形にあるギャップを知ることとなる。
海外製のパナマハットは比較的クラウンが高く、丸顔で頭の大きいTHE・日本人の顔つきにはおおよそ似合うものが少なく感じていた。
それから自分に合った帽子を探していく内に、偶然帽子専門店で見つけた国産のハットメーカーと出会う。
BUNJIROW(ブンジロウ)/西川製帽店


西川製帽の前身となる西川屋帽子店 は明治27(1894)年に創業。130年以上が経つ老舗帽子店。
創業者の西川仁平(にへい)氏はハワイで帽子作りを修行後、神戸元町にて開業する。
そこから大正時代に大阪に拠点を移し、
「昔は帽子を被る方が多かったが、バブル崩壊後はめっきり減ってしまい、今まで同様のOEMだけでなく”いつか作りたい”と思っていた帽子ブランドをスタートさせた。」そう語るのは、四代目の現社長西川文二郎氏。1999年に、自らの名前を冠するハット専業ブランド「BUNJIROW」をスタートさせる。

当初はオンラインのみでの販売を行っていたが、高級ハットのオーダーも受け付けているので、大人の隠れ家的な場所で店を営みたかったという願いもあり、
大阪の天王寺区に文二郎帽子店をオープンさせ、今年で10周年となる。
5つの時代を見てきた西川製帽。その中で培われてきた技術や工夫を、日本人に合った最高級の帽子作りへと昇華してきた。
素材

BUNJIROWの夏の定番帽子、パナマハット。
先程も冒頭にてご紹介した、エクアドルにて栽培、収穫されたトキヤ草という植物を乾燥させ、細かく裂き、編み上げることで帽子の元となる「帽体」が出来る。
1つの帽体を編み上げるのに平均でおよそ1週間。全て手作業になる。
ちなみに編み目の細かさによってグレードが変わります。
そうして輸入した帽体を、まずは質の高い物を提供出来る様に、品質管理に時間をかけ、状態や編み目の細かさを選別する。
これについては、帽体を直接にエクアドルにオリジナルサイズ発注をかけている為、個体差も大きいことが理由の一つとしてある。
生産

そうして丁寧に選別された帽体を、ハット製作に使用されるプレス機は戦前から受け継いでいるものをメンテナンスして使用し、
時代のニーズに合わせて木型や金型(帽体を帽子の形に成型する際の型)は増やしていき、現在では15種類の帽子の形を製作できる。
そのどれもが日本人の骨格に合わせて作成されたものになるので、フィット感がよく、日本人に似合う形を選べるのも嬉しいところだ。
BUNJIROW(ブンジロウ)パナマハット ツマミ オフホワイト×ネイビー

前を軽くつまみ、ツバの前を下げた「ツマミ・スナップブリム」の基本形。
クラウンの高さが低めに設定されており、横幅を持たせ丸みがある。

帽子を上から見た際にしずく型(ティアドロップ型)になるため、頭にフィットしやすくなっている。
丸型の日本人の頭に特に合う形。とは言え、様々な顔の形の方にも合う入門編にして、特にお勧めしたい1型をオーダー。
つばの長さも5センチと、ショート~ミドルブリムで、合わせるボトムスや、スタイルを選ばない絶対的定番パナマ。



西洋のパナマハットは、当然のことながら西洋人の頭の形に合わせて作られる。その為縦に長くクラウン(帽子の頭を入れる部分)が高いものが多い。
こちらのツマミタイプは、クラウンが低く設定されて丸に近い形状の為、THE・日本人仕様のパナマハットと呼べるだろう。

パナマハットのグレードは、特に目の細かさによっても分類される。
ZABOUで今回扱うのは石目編み。カジュアルに被りやすい編み目の細かさ。

また、一般的に多いブラックリボンと比べると、流通量の少ないネイビーリボン。
デニムの藍、ブレザーの濃紺に合うこちらのカラーで仕上げて頂いた。


現在5代目の西川綾氏も携わり、西川製帽はまた次の時代へと継承されていく。
「BUNJIROWで製造出来る商品は帽体物で限りがあるので、生産量はそこまで増やすことはできない貴重な逸品。
代々受け継ぐ日本では数少ない型入れ帽子の技術を絶やすことなく、高品質のパナマ帽・フェルト帽作りを続けながら総合帽子専門店にしていきたい」と語る。
スタイリングについては後日ご紹介予定。
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幅広い年齢層、スタイリング、シーンに合う大人の正帽です。
これから皆さまの夏の一張羅に取り入れて頂けると確信しております。
私も早速人生二つ目のBUNJIROWを手にしました。宜しければ続編もご期待下さいませ。